2010年08月08日

【iPhoneアプリ勉強会/第3回 5/6】講師:廣瀬則仁さん(物書堂/代表作:「大辞林」「ウィズダム英和・和英辞典」)

iPhoneアプリ勉強会第3回レポート記事
レポート記事その6はこちらです。
レポート記事その1はこちらです。
レポート記事その2はこちらです。
レポート記事その3はこちらです。
レポート記事その4はこちらです。
レポート記事その5はこちらです。


[iPhoneアプリ勉強会]

トークセッション iPhoneアプリとは、こういうものであると定義するアプリ

村井:たいっへん! おもしろいお話、ありがとうございました。この後、質疑応答に入るわけですが、用意してきた質問や、ツイッターでいただいた質問の多くに、すでにお話の中でお答えいただいているような気がしますが……。では、最初の質問です。iPhoneをなにものだとお考えですか? また、その未来になにを期待されていますか?

廣瀬:僕個人はゲームはやらないので、(iPhoneは)ビジネスのツール、大人が使うものだと思っています。仕事や勉強で役立つものですね。ゲームはいっぱい出てくるだろうと思いましたが、ツール系等、僕らがやれることの方が広いと思っています。とにかくなんでもできるデバイスですから、僕らがアプリを開発して、さらに広がりを持たせることができます。こういうふうになればいいなと思っていた世界ですよ、今。こうなればいいなと思っていた状況がきています。

宮下(AppBank編集長):要望はないんですか? 温度計がついてほしいなとか。

廣瀬:ハード面の要望はないですね。ただ、女性向けでなにかないかなぁとは思います。女房も使っているんですが、かわいくないんですよ。アプリもケースも、本当に女性向けというものはないんじゃないですか。そういう点では、細かなニーズが吸い上げられていないということですよね。電車の中で普通に使っているような女性は、いくら女性向けに作った情報サイトでも、見てないんじゃないかと思います。こういうニーズに応えられていない部分もあるわけですから、ありとあらゆることに、デベロッパーさんには挑戦してほしいですね。

宮下:25万本あると言われているiPhoneアプリでも、まだ開拓できる余地があるということですか?

廣瀬:本数ではなく、本当に優れたものが出てこなければならないんだと思います。iPhoneアプリを作るなら、こういうものを作らなければならないだろうというようなアプリです。ありとあらゆるものがそんなふうに作られたら、すごいんじゃないですか? でも、それは本当にユーザーと向きあって、ニーズをつかみ取っていけば可能だと思います。

宮下:どういった観点で、ユーザーの声を集められていますか? その取捨選択の基準はありますか?

廣瀬:価値観の違いということはあります。AppStoreのレビューを読んでいても、僕と価値観の異なる人の要望は聞き入れにくいです。(好評や批判ということではなく)共感できる意見があった時には、なぜ、そう思われたのかということを突きつめていきます。そうすると、自分が意図していなかったような指摘を受けたり、自分がまちがっていたんじゃないかと思ったり、いろんなことが見えてきます。結局、ソフトウェアは心理的なものなんだと思うんです。

ユーザーからの要望を反映するにしても、こうしてくれと言われたからそうしたというのではダメなんです。こうしてくれという要望が出てくる奥に、ユーザーの心理があるんです。それを慮る必要があります。

結局、ソフトウェアというのは、ディスプレイ上にウソの世界を見せるものなんですね。ボタンも、押した感じに見えるものです。すべてはったりです。ただ、そのはったりが自然にいくと、使いやすいと感じられるものです。そして、自然にいくというのは、潜在的な期待に対して素直にしたがっていくということです。たとえばボタンがあれば、押したいと思いますよね。となると、押しても反応しないボタンは最悪なんです。

エルゴソフトではテスターを集めることもあったのですが、Macユーザーというのは数が少ないので、なかなか集められないんです。それで、Macのソフトなのですが、Winのユーザーさんにテストしてもらったりしていました。それが逆におもしろくて、Macに対する潜在的な欲求がないので、本当に素直に「あ、Macって使いやすいんですね」と言われたりするんです。そう言われれば、勝ちですね。

ちなみにテスターさんの反応のどこを見るかというと、一瞬、画面上でポインターが泳ぐような時があるわけです。操作に迷って。そういう時に、操作を止めてもらって、話を聞くんです。なぜ、迷ったのか? やっぱり心理的なものなんですよね。

宮下:今日はお話をお聞きしていて、物書堂さんのアプリ開発にかける姿勢、お考えに崇高なものすら感じています。ところで、大辞林にツイッターでつぶやく機能が入りましたね? 反応はいかがですか?

廣瀬:目的を持って調べるということだけではなくて、ただなんとなく大辞林を見ているということもあったり、友だちと「その言葉ってこういう意味だろう」と、ちょっと言い争いになったりすることもありますよね。そんな時に「え、これってこういう意味だったの?」と思ったら、それをシェアしたいんじゃないかと思ったんです。それがツイッター機能を追加した理由です。

もう1つはマーケティング的にも意味があって、ハッシュタグ #daijirin がつきますから、「大辞林、楽しそうじゃん」と思ってもらえます。いろんなことをある程度、自分たちで幅を持たせてやってみているという感じです。

宮下:三省堂さんは大丈夫だったんですか?

廣瀬:(ツイッター機能を)ひと通り、作ってからお見せしました。「まぁ、いいでしょう」と。でも、けっこうツイートされてるんですね。そのうち全部つぶやかれるんじゃないかというのが、心配です。

脇(AppBank ツール系メイン担当):アプリを作られる際に、最初から完成形が頭の中にありますか?

廣瀬:実は、物書堂では仕様書を書かないんです。開発に関するドキュメントは一切ありません。そんなものを書いてるくらいなら、作った方が早いからです、たった二人でやっていることでもありますし。iPhoneの開発環境は本当によいので、(仕様を)ちょいちょい変えながらでも、全然問題はありません。もちろん辞書アプリなら「言葉を引ける」というような要求仕様はありますから、それは意識していますし、スケジュールもだらだらしないように注意しています。

村井:私、この大辞林のインデックス画面と言いますか、言葉の大海原が大好きなんですが、このイメージはどこで得られたものなんですか?

廣瀬:ヒントはGoogleマップでした。世界中をスクロールできる、ディスプレイの向こうに地球がある、そんな感覚をぽんっと出してきたじゃないですか。それを「この向こうに日本語がある」という感覚で捉えれば奥行きも出るなと考えました。そのために使うべきなのは、スクロールです。iPhoneの画面は小さいのですが、その画面の使い方も小さいアプリが多いと思うんですね。でも、スクロールさせればいいじゃないかと。加速度もつくし、びゅんびゅんと気持ちよくいきますからね。

[AppStore]

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posted by 倉西誠一 @kararemichi at 21:08 | 石川 曇り | Comment(0) | TrackBack(0) | iPhone | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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